一般のみなさまへ 思春期の健康課題

一般のみなさまへ
(思春期の方・保護者・教育関係者など)


日本思春期学会から一般のみなさま(思春期の方・保護者・教育関係者など)への情報提供として、このページでは、思春期の健康課題について解説します。

「生理の前にイライラや無気力がひどいのですが」

生理の前だけに症状があらわれて、生理が始まると症状が軽くなり気にならなくなるようであれば、月経前症候群(premenstrual syndrome: PMS)の可能性が高いと思われます。精神的症状が中心でより症状が重い場合は、月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder: PMDD)となります。我が国において、PMSやPMDDは一般社会だけでなく、医療サイドでの認知も不十分です。特に、思春期おいては生理痛にばかりに注意が払われて、PMS症状にはほとんど注意が払われていないのが現状です。高校生を対象とした調査では、14.4%で社会生活に障害がでるようなPMS症状が認められ、月に1日以上欠席する者は11.9%で、思春期から社会生活に大きな障害となっていることが明らかとなっています。

-----どのような症状がおこるのでしょうか?

日本の高校生でよくみられる症状を示します。細かいものを合わせると150種類以上の症状があるといわれています。
(T. Takeda. et al., Arch Womens Ment Health, 2010.)


-----どうしておこるのでしょうか?

女性ホルモンの分泌が悪いのではないかと心配されるかたもおられますが、むしろホルモンは正常でちゃんと排卵している場合に起こります。はっきりとした原因はまだわかっていません。ただ、セロトニンやGABAなど、脳の神経に働く「神経伝達物質」に異常が生じて起こるのではないかと考えられています。また、排卵を抑制すると症状がおさまるので、排卵後に分泌が増える「黄体ホルモン」が悪さをしている可能性が考えられています。

-----最初はどうすればよいのでしょうか?

今の症状がPMS症状であるかをスクリーニングするための問診票(PSQ)を本稿の最後に載せましたので参考にしてください(日本の高校生での妥当性・信頼性も検証されています)。症状の強さで「3」や「4」のある方は、かなり症状が強いと思われます。まずは生活習慣の見直しや食事指導、運動習慣による改善を目指します。生活習慣としては、規則正しい生活リズムを心掛け、夜更かしをさけ、睡眠をしっかりとるようにします。食事では、精製糖質(いわゆる砂糖)をさけ、牛肉といった赤色の肉よりは鶏肉や魚を摂取し、緑黄色野菜などによる食物線維摂取を心掛けます。一般的には、伝統的な日本食(和食)をイメージするのがいいかと思います。コーヒーなどのカフェイン摂取は、これまでよくないと考えられてきましたが、最近のデータでは否定的です。過量摂取は興奮作用の可能性がありますので避けるほうがいいと思いますが、適量であれば問題にはならないと思います。可能であれば、重症度を認識するためにも、簡単で構いませんので日々の症状を記録するのも重要です。周期のなかのどのタイミングで症状がでるかが自分で分かるようになり、大事な用事をいれない等の対応ができ、症状の緩和効果が期待できます。

-----栄養面からの治療は?

様々ことが言われていますが、ある程度の効果の裏付けのあるは、精神安定作用のあるカルシウム、セロトニンを作るときに必要なビタミンB6やマグネシウムです。これらのサプリメントを使用してみてもいいです。

-----薬物治療は?

症状が軽い場合は、鎮痛剤や精神安定剤など症状を抑える治療(対症療法)を行っていきます。日常生活に支障が出るほど症状が重い場合は、低用量ピルやセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬を使用することもあります。ただ、SSRIに関しては未成年者での自殺リスクが増加する可能性が報告されていることから、かなりの注意が必要で、思春期ではファーストチョイスではありません。漢方薬は副作用も少ないですし、軽い症状からある程度重い症状でも対応できるので便利です。病院やクリニックから保険診療で処方してもらうことも可能です。

-----症状がきつい場合はどこへ相談すればいいのでしょうか?

思春期の場合には、低用量ピルを使用する場合が多いですから、最初は婦人科への受診がよいかと思います。ホルモンや思春期のことに詳しい医師がベストです。精神症状がきつくて、他の精神疾患が考えられる場合には精神科への紹介が必要となる場合もあります。

PMS問診票(PSQ)(T. Takeda. et al., Int J of Womens Health, 2020)

※個人での使用は自由としますが、研究目的や営利目的での使用は原作者の許可をえるようにしてください。

以下の各症状について、この約3ヵ月間にあなたがどの程度の経験をしたかを症状の強さに対応した番号を丸で囲ってください。
(A)生理が始まる1〜2週間前より次のような症状があらわれましたか?

1 悲しい感じ、おちこんだ感じ、ゆううつ、 絶望感ぜつぼうかん 、自分自身が価値のない存在であると感じたり、罪の意識を感じた。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

2 不安、 緊張きんちょう興奮こうふん 、イライラを感じた。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

3 突然悲しくなったりなみだもろくなった。 拒絶きょぜつ に対して 過敏かびん になったり感情が傷つきやすくなった。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

4  いか りを感じたり、怒りやすくなった。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

5 普段の活動(友人、 趣味しゅみ 、学校)に興味がわかなかった。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

6 ものごとに集中できなかった。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

7 無気力を感じたり、あきあきしたり、疲労を感じた。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

8 つねにお腹がすいており食べ過ぎた。あるいは特定の食べ物に 執着しゅうちゃく を感じた。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

9  ぎた、朝起きるのがつらかった。あるいは寝付けなかったり夜中にめがさめた。睡眠の状態がふだんと違った。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

10  圧倒あっとう された感じがしたり、うまく対処できないと感じた。あるいは自制できないと感じた。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

11  乳房ちぶさ のはりや痛みを感じた。 関節痛かんせつつう、または筋肉痛を感じた。体重増加や体のむくみを自覚した。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

(B) 以上1から11の不快な症状の少なくともひとつで下記のようなことがありましたか?

1 学校、自宅での日常生活で勉強、家事がはかどらなくなった。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

2  趣味しゅみやクラブ活動・社会活動への参加をやめたり参加回数が減った。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

3 他人との関係に 支障ししょう をきたした。

まったくない 軽度 中等度 重度
1 2 3 4

(C) このようないやな感じは生理が始まると数日内になくなるか軽くなった。
はい いいえ

(あてはまる項目を丸で囲んで下さい)