一般のみなさまへ 思春期の健康課題

一般のみなさまへ
(思春期の方・保護者・教育関係者など)


日本思春期学会から一般のみなさま(思春期の方・保護者・教育関係者など)への情報提供として、このページでは、思春期の健康課題について解説します。

「自分の性に違和感を覚えます」

自分自身の性を考えるとき、あなたはまず何を考えますか?生まれ持った体の性なのか、恋愛対象はどの性の人なのか、様々だと思います。性に関することが周囲の人と違うと感じたり、何らかの違和感を感じたり悩んだりしている人もいることと思います。しかしながら、思春期の性にまつわることは繊細なことなので、誰にも言えないということも多くあるのではないでしょうか。

性を分解してみる

周囲の人と何か違うのではないかと思春期に気付き、とりわけそれが性に関わることであれば「相談しづらい」「誰にも相談できない」と思ってしまうかもしれません。性について改めて考えてみるときに、例えば(1)身体の性別(生まれながらの生物的な性)、(2)性自認(自分の性をどのように認識しているか、性別認識と表現されることもあります)、(3)社会的な性別(性別役割:社会的に期待される男・女としての役割や、性別表現:服装や髪型、会話などでどのような振る舞いをするか)、(4)性的指向(恋愛や性愛の対象、好きになる性)、(5)法的な性別(戸籍や住民票に記載される性)といった5つに分けて考えてみるとわかりやすくなるかもしれません。

性の違和感と一口で言っても、社会的に期待される男らしさ女らしさの役割に関連する違和感なのか、男は男らしく、女は女らしくしなければいけないという規範意識に基づく同調圧力への違和感なのか(例えばピンクは女の子の色だから男の子はその色の服は着てはいけないと言われるけど、自分は好きな色だから本当は着たいのだけれども、といったことも含め)様々でしょう。あるいは、周囲の友人らの恋愛対象や性愛の対象は異性であるのに、自分の場合はその対象が同性であることに気付いた時に感じる違和感であるのか、自認する性別と身体の性別が異なることによる身体への違和感なのか、性に関する違和感と一言で言っても多種多様です。

性的指向と性自認の多様性

LGBTといった言葉を以前に比べると耳にすることが増えたかと思います。女性の同性愛のレズビアン(Lesbian)、男性の同性愛のゲイ(Gay)、男女両方とも恋愛対象となるバイセクシュアル(Bisexual)、出生時の性別とは違う性別で生きる人、生きたいと望むトランスジェンダー(Transgender)の頭文字をとってLGBTと呼ばれています。また、性自認や性的指向がはっきりしない、わからない、揺れ動いているといった場合のクエスチョニング(Questioning)を加えて、LGBTQと表現される場合もあります。最近では、自らの性別を男でも女でもある・男でも女でもない・性別がない・男女の中間の中性である、性別が定まらない(不定性)といった認識を持つエックスジェンダー(X gender)の存在も、知られるようになってきています。

2016年に広告代理店の博報堂DYホールディングス・LGBT研究所が実施した全国の20〜59歳を対象にしたインターネット調査 (有効回答数89,366人)(文献1)では、女性の同性愛のレズビアン1.70%、男性の同性愛のゲイ1.94%、男女両方が恋愛対象となるバイセクシュアル1.74%、出生時の性別とは違う性別で生きたい・生きることを望むトランスジェンダー0.47%であり、LGBT人口は5.85%と推定されています。学校に置き換えればクラスに1〜2人と考えられます。

性に違和感があることはおかしいこと?

正しい情報があって人と違ってもいいのだと思える情報が予めあれば、違和感を持たずにおれるのではないでしょうか。LGBTQやXジェンダーの存在が正しく伝わっていないと、自分自身のことを「何かおかしいのか?」と考えあぐねてしまうかもしれません。恋愛対象が異性ではない人も存在しますし、出生時の性別とは異なる性別で生きたいと思う人等、性の有り様は様々です。今の日本社会にはその情報が十分に行き届いていないために、戸惑いにつながってしまっています。また、「男らしさ、女らしさ」の規範や性別役割、服装や髪型などを通じて表現されることが多い性別表現(gender expression)は時代や地域、文化などに影響されその価値観は様々に変化していくものです。

医療における捉え方

かつて同性愛は精神疾患であると捉えられていましたが、1973年に米国精神医学会は「精神障害の診断と統計の手引U(DSM-U)」から病理としての同性愛を削除しました。しかし1980年のDSM-Vには性的指向について苦悩・葛藤する状況を捉えた「自我不親和性同性愛」が加えられましたが1987年のDSM-V-Rからこの用語も削除され、疾病分類としての同性愛は完全になくなりました。1992年に世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類改訂版第10版(ICD-10)」において「同性愛はいかなる意味においても治療の対象とはならない」と宣言を行っています。性同一性障害については、2019年5月にWHO総会において2022年から発効するICD-11から、精神疾患の範疇から削除され「性の健康に関する状態」といったカテゴリーに加えられることが決まっています。これによって、脱精神医療化するとされています。

もし悩んだり困ったときは

インターネットの検索サイトで「LGBT 電話相談」と検索してみると、行政や当事者支援団体等による電話相談が数多く見つかります。先ずはこういった電話相談をきっかけに、悩みや戸惑いを話してみることも対応策のひとつです。性自認や性別の違和感がある場合は、トランスジェンダー・性同一性障害について専門知識を持つ精神科医や臨床心理士・公認心理師がいる医療機関を探して受診するようにしましょう。

(文献1) 博報堂DYホールディングス・LGBT研究所(2016)博報堂DYグループの株式会社 LGBT 総合研究所、6月1日からのサービス開始にあたり LGBT をはじめとするセクシャルマイノリティの意識調査を実施、https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2016/05/HDYnews0601.pdf