一般のみなさまへ
(思春期の方・保護者・教育関係者など)

日本思春期学会から一般のみなさま(思春期の方・保護者・教育関係者など)への情報提供として、このページでは、思春期の健康課題について解説します。

「マスターベーションのしかたがわかりません」

マスターベーションの方法で、将来子どもを作りにくくなるかもしれません。成人の男性不妊外来で、射精ができない、勃起が弱い患者さんが受診しますが、その中に腟内射精障害、勃起持続障害の原因が、小中学生からの誤ったマスターベーションの方法である方が多くいます。成人での治療は難しく、予防が第一です。誤ったマスターベーションとは、うつ伏せになり陰茎を布団や手で押さえつける方法で刺激、陰茎を強く握る刺激、陰茎を手で早く刺激をするなどです。正しいマスターベーションの方法とは、腟内射精障害などにならない方法、つまり手で輪っかを作り、弱い刺激でゆっくり手を前後に動かす方法です(図1)。

腟内射精障害になりにくいマスターベーション方法

図1 腟内射精障害になりにくいマスターベーション方法

—–症状について

男性不妊外来で問題になる疾患として、腟内射精障害と勃起持続障害があります。腟内射精障害の症状は、マスターベーションでは射精できますが、女性器の中で気持ちよくなく、射精ができない状態です。
また、勃起持続障害の症状は、女性器の中で気持ちよくなくて勃起が続かなくなる状態です。結果的に射精ができず、自然に子供を作ることができなくなります。

—–原因について

東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターを不妊症や性機能障害で訪れた患者2070名のうち勃起障害73% 射精障害25% その他2%で、挙児希望40.3%でした。
そして射精障害の内訳は、腟内射精障害37% 早漏・遅漏21% 逆行性射精21% 射精が全くない19% その他2%で腟内射精障害が最も多い結果でした。
腟内射精障害の原因は、誤ったマスターベーション47%、性行為に集中できない20%、持続しない13%、原因不明20%と小中学生からの誤ったマスターベーションの習慣が最も多かったです。
小中学生からの誤ったマスターベーションの習慣とは、うつぶせになり陰茎を布団や手で押さえつける方法で刺激、陰茎を強く握る刺激、陰茎を手で早く刺激するなどです。

—–対応・治療について

誤ったマスターベーションの習慣による腟内射精障害や勃起持続障害は、大人になってからの治療は難しく、子供を作るためには人工授精になる場合があります。つまり予防が第一です。小中学生の時から正しいマスターベーションの方法を習慣にすることが大事です。正しいマスターベーションの方法とは、腟内射精障害などにならない方法、つまり手で輪っかを作り、弱い刺激でゆっくり手を前後に動かす方法です(図1)(文献1)。

マスターベーションの回数は、小中学生で始めたころが多く、週1-7回、平均4.3回(文献2)というデータがありますが、疲れて勉強や日常生活に支障がない程度にしましょう。また、部屋を不潔にしないことも大事です。ティッシュペーパーよりはトイレットペーパーを使用しトイレに流すようにしましょう。

——どこへ相談すればよいか?

男の子にとっては、マスターベーションは特別なことではありません。364人の一般成人男性のアンケート調査では、11-15歳の間に全例マスターベーションを経験しています(図2、文献2)。

自慰の経験の有無

図2.自慰の経験の有無(一般男性調査)

将来の射精障害・勃起障害・男性不妊症といった病気の予防のため、正しいマスターベーションの方法について友達、男の先生などと話しあいましょう。

文献1 永尾光一著:男の子の体と性の悩み 少年写真新聞社
文献2 永尾光一: 思春期学 Vol 15:163-168, 1997